SIMロック解除後の携帯端末事業環境

2014年6月28日毎日新聞はSIMロック:解除を義務化へ 15年度にも実施 総務省という記事を公開した。記事で「2015年度」にも解除を「義務化」となっているが、6月30日総務省のICTサービス安心・安全研究会は、消費者保護ルールの見直し・充実に関するWGにおいて、中間取りまとめ(案)を公表し、この中でSIMロック解除のルール化において「総務省において対象端末及び解除方法並びに実行の確保を含む具体的な運用方針やスケジュール等を明らかにすることが適当である。」としている。

2015年度かどうかは定かではないが、「実行の確保」という言葉から義務化ととれる。

SIMロック解除できることが一般的になると、通信/サービスと端末の結びつきを強制することができなくなる。これについて事業者からの指摘を中間取りまとめ(案)のなかで述べているが、総じて消費者の自由を尊重する内容で「実行の確保」としている。

では、これが実現した状況を考えてみる。

まずは端末である。端末と通信/サービスを結びつけることができなくなった以上、価格競争にさらされ、そしてコモディティ化が促進されると考えられる。現在でもスマートフォンの性能を比較してみると判るがその兆候が見られる。そうなると、市場規模は拡大しても消費者が投下するコストの伸びは減っていくだろうから儲からないビジネスとなり、端末作る企業は限定されてしまうだろう。いくつかの企業で寡占化状態となり、新たに大きな付加価値をハードで実現する方法を見つけなければ新規参入のうまみはない。あるいはソフトウェアが買い替えを促進するモデルが再来する。

消費者は現在一般的に行われている販売奨励金による端末価格の割引を受けることができなくなる可能性があり、そうなれば一時的に出費が嵩むことになる。しかし、端末を今よりも長く使おうという心理がでてくるはずで、通信/サービスに支払う金額と合わせると長期的に見てコストが下がる。ただし、PCのようにOSや基幹となるソフトウェアの更新や、もしくは更新停止により端末を使いつづけることができなくなる可能性がある。

次は通信/サービスである

自由に通信/サービスを選ぶことができるようになったら消費者としてどのような選択をするか。大きくは以下のような理由だろう

  • 安い
  • 通信品質が良い(つながりやすい/速い)
  • サービスが良い(使いたいサービスがある/アフターがよい)
  • 通信事業者が販売奨励金モデルも維持しつつ、ユーザが持ち込んだ端末へも通信/サービスを提供するならば、こちらも価格競争について行けなくなる可能性がある。販売奨励金は全体として販価を押し上げるからだ。

    通信インフラを持つ事業者の救いは通信とサービスを分離することである。

    通信は品質確保と徹底したコストダウンでMVNOに振り向いてもらえるようにする。ここは一定の利益を確保できる部分である。

    サービスは差別化がまだ可能な分野である。MVNOにない規模を生かしたもの売りにする。auウォレットなど最たるものだろう。これに加え乗り物、公共施設、公的機関との連携などが考えられる。音楽や映像コンテンツといった規模が生きる分野は押さえて置くべきだろう。また、端末のアフターについて代理店のような役割を行い、アフター料を得ることができるかもしれない。消費者は安心感にコストを払う。

    MVNOも通信性能だけで競争するのは危険である。通信性能は大差がつかなくなる可能性が高い。競争するべき土俵は今後サービスになるであろう。

    さて、ここまで書いた内容をみると、携帯端末事業環境はそうとうに楽観できない状況だ。今後利益を生み出すにはいろいろな工夫が必要となるだろう。それに早く気がついて大きく舵を切れるかどうかにかかってくるのではないだろうか。

    コメントを残す